不動産の相続対策

相続問題における問題に「情報格差」の問題があります。「前もって知っていれば、こんなことにはならなかったのに」たった一つの知識がなかったために、悲しい辛い思いをされる方がとても多くいらっしゃいます。たった一つの知識や正確な情報さえあれば、その後の人生がまったく違ったものになっていく。それが相続の現実です。

なぜこのような問題が起こるのか?正確ではなき情報に振り回されてしまうのか?それは、相続を自分事として捉えることができないからです。相続対策とは、自分の死について受け止める必要があるから、どうしても腰が重くなってしまいます。円満な相続のために相続が発生したあとにできる対策はせいぜい10%程度、残りの90%は相続が発生する前にしかできません。しかし、事前対策の重要性を感じている人はまだ少なく、実際に行動に起こす人は対策が必要な人の30%程度にとどまっています。

事前の対策は親(自分)が生きている間、元気でいる間にしかできない対策です。ひとりでも多くの人が相続を「自分事」としてとらえ向き合い、行動し、円満に終われるよう願っています。

相続診断士 高山利春

【うちはお金持ちじゃないから…、その考えがトラブル を招く】

「資産がないから」、「相続税はかからないから」「だから相続問題は起こらない?」というのは大きな誤解です。
全国で全死亡者のうち、相続税を納めなければいけない人は約8%くらいの人です。12人に一人の割合です。「なんだ、やっぱり自分には関係ない」そう思ってはいけません。相続で起こる問題の大半は、相続税の問題ではないのです。
相続人の遺産分割によるトラブルが圧倒的に多いのです。

親族間の遺産争いは映画やドラマの中の出来事ではありません。
相続争いというと資産家が遺産をめぐって相続人が争うというイメージがあります。しかし、実際には資産のある人の方が遺産分割トラブルは少ないのが現状です。
遺産分割をめぐる裁判のうち、1,000万円から5,000万円の争いがもっとも多く全体の45%、1,000万円以下でもめるケースは約34%、つまり、遺産分割をめぐって裁判になった人の4人に3人が財産5,000万円以下なのです。

5,000万円以下といえば、住んでいた不動産(持ち家)が1件という場合がほとんどです。つまり、不動産が1件だからこそ遺産相続でもめるのです。
不動産は分けにくく、価値もわかりにくい。これがもめる要因のほとんどです。相続財産の構成比は不動産が遺産の約半分を占めるのです。

【争族の大半の問題が不動産です】

日本の全資産の75%は不動産です。日本で起きる相続はかなりの部分が不動産の相続である。相続財産には、土地家屋株式預貯金有価証券家財等、無形財産みなし相続財産(死亡生命保険、死亡退職金)日本の場合ほとんどが不動産に偏っている。約70%の資産が不動産 相続も不動産がほとんどである。相続トラブルは不動産の分け方に端を発するものが多いです。

【不動産の相続がもめる3つの要因】

なぜ不動産の相続が問題になるのか?
それは、①分けられない②すぐに換金できない③価値(金額換算)がわかりにくいという3つの特徴があるからです。
玄関は長男、居間は次男 2階は長女にというわけにはいきませんし、土地を売却するにしても隣地との境界が不明では売ることもできません。分筆をして一部を売るにしても測量しなければなりません。
土地を売却となれば古い家は解体して更地にしなければならない場合もあり、さらにいくらで売れるのかという問題が残ります。

不動産の価値はわかりにくいので相続トラブルの一因になります。
自分の家が今いくらの価値があるか即答できる人はなかなかいません。
不動産の価値はわかりにくいものです。
不動産の評価と価値は必ずしも一致しません。税理士や司法書士も不動産の「価値」はわかりにくいものです。不動産の価値とはその不動産が市場に出た時の価格とも言えますが、必ずしも評価には反映されません。
実際の土地や建物を現地で調査しないとわからない要素も関わってきます。道路付け、方位、前面道路、インフラ、高低差、傾斜、管理状態、周辺状況なども価値に影響を与えます。
「詳しく調べていないけど、自分の不動産には価値があるはず」「ある程度の値下がりはわかるけど、買った時の半額くらいでは売れんでは?」というような根拠のない思い込みがさらに混乱することになります。空き家になってしまった実家の土地や家屋であれば早めに処分したほうが良いケースが多くあります。

不動産を分ける方法には3つの分割方法があります。
ひとつ目は、実際に不動産を持ち分に応じて分ける、「現物分割」不動産を分割し相続人に分けるのは簡単ではありません。
二つ目は、ある相続人が取得する代わりに相当の金額を他の相続人へ支払う「代償分割 (価格賠償)」しかし、資金に余裕のない相続人はこの方法はうまくいきません。
三つ目は、不動産を売却し代金を持ち分に応じて分ける「代金分割(換価分割)」売却代金をいくらにするかでもめるケースもあり、いずれも相続人全員の同意が必要になります。

【やってはいけない不動産の共有】

不動産は相続した瞬間に基本的に相続人の共有物になります。夫が死亡し住まいが妻と子供たちに相続された時点で共有名義不動産になります。きっちり線引きができれば問題は起きにくいのですが不動産では困難なケースが多いのが現実です。
代を経れば経るほど、共有者がいわば鼠算式に増えていくケースが当たり前のように起こっています。土地全体を売却するには共有者全員の承諾が必要ですし、音信不通の人や仲良くない人が相続人にいるとかなりの確率でもめることになります。
とりあえず面倒だからと放置すると、放置によってますます共有名義者は増えていくことになります。共有者が10人以上なんてことはザラにあります。

不動産の共有は百害あって一利なし

共有とは土地や家を分割せずに、相続人全員で共有名義にしておくことです。とりあえず共有、これが後々のトラブルや空き家になってしまう要因になります。子供の2人の共有名義が、共有を放置してくと、お子様が生まれ、その後相続され6人の共有となります。
共有名義人が増えるとそれぞれの思惑が入り交じりトラブルが多くなります。「売りたい」「売りたくない」「アパート建てたい」「分割したい」「お金でちょうだい」売るには、共有者の同意が必要なので、相続が繰り返されると関係の遠い人や配偶者も入りより複雑になってしまい手が付けられない不動産になってしまうのです。
相続後に訪れる不動産の共有トラブルは金額の大小は問いません。各人の思いの多寡によって決まるのです。
今後トラブルは増え続けていきます。ここで油断をしていると、不動産は「とりあえず共有」になってしまします。将来の「負動産」にしないためにも共有にはしない、自分の代で解消し、将来の子供たちに負の遺産、もめごとは残さないという意思が大切です。共有不動産が原因で仲の良い家族や親戚をバラバラにしてはいけません。ご家族で気持ちを共有しておく事がとても大切です。
かといって、自分たちだけ、利害関係者だけで解決していくことは難しいのが現実です。弁護士、鑑定士、税理士、司法書士、行政書士、不動産コンサル、建築士、FPなどそれぞれの専門性の高い専門家に相談するのもひとつの方法です。

では、いつ相続対策に行動すればいいのか? 決して早すぎることはありません。
相続が発生しまったらできる対策はせいぜい10%しかないのです。